夏目漱石全集5 三四郎/それから

ちくま文庫

再読本なので、いつもと違う視点で読んでみた。

三四郎

三四郎の若さゆえの馬鹿っぽさは、まあ二の次。

美禰子の心理が読めないのは、三四郎の目で話が進むので当然。

ただ、広田先生みたいな人を出すのが

この小説の凄いところだと思う。

だって、明治時代に日本もどんどん発展するだろう、

というのに対し、

「亡びるね」

と広田先生に言わせる辺りとか。

広田先生の

「その時僕が女に、あなたは画(え)だと云うと、

女が僕に、あなたは詩だと云った」

という部分の夢の話とか。

『それから』

学校卒業してから、

30くらいになっても一度も就職経験がない代助。

なのに、親の金で風呂付き一軒家に住み、

さらに下女と書生も住まわせている代助。

働かない理由を

「なぜ働かないって、そりゃ僕が悪いんじゃない。

つまり世の中が悪いのだ」

と言う代助。

代助と三千代の道ならぬ恋愛について読む、

のが通常なのだけど、今回は、上記にあるような

代助のニート生活を生暖かく見守る読み方も

できるのでなかろうかな。