ウィリアム・フォークナー/著 高橋正雄/訳 講談社文庫
冒頭のつけたしの、登場人物紹介の小話の波乱万丈さが面白いので
本文を楽しみにしていたら、難解すぎで一週間くらいかかっての読了。
白痴のベンジャミン→自殺直前のクエンティン
→ただ一人の正常人ジェイソン
→第三人称
という視点での語り口なので、
前半ほどわかりにくく、後半になるにつけ
全貌が明らかになるという手法。
特にベンジャミンとクエンティンの章は、
本人たちの感情の動きそのままなので、現在体験していることと、
本人たちがそれに触発された過去の思い出、
そのあたりがごっちゃになる。
20世紀に書かれた小説の中でも最高のもので
アメリカ南部独特の雰囲気がすばらしいけど、万人向けとはいえない。
補足覚え書き
たぶんフォークナーで一番有名なのは『サンクチュアリ』。
性的不能者が女子大生を暴行(方法はかなり変質的なので略)、
というのがあらすじ紹介されてたりするので、かと思う。
これのせいで『サンクチュアリ』のテーマが
何か誰も思い出せないくらい。
私も10年程前に読んだが、その部分ってほんの一部で
全体がそういう話でなかった気が……。
しかも、あらすじ部分はあからさまな描写はないし。
(1930年代に書かれているから当然といえば当然)