幸田文 新潮文庫

結核専門病院の様々な患者のエピソードが、四季を通して書かれる。

特に主人公を置かずに、各患者の話が綴られていて、

家族間の悲劇や醜さも書かれていても、それが下世話な感じがしない。

昭和40年代なので、それより昔程は死病扱いされていないけれど、

エピソードでは助かる人よりも死にゆく人のものが、やはり印象強い。

特に助かる人でも、社会復帰が心配で自殺してしまうという

エピソード。

幸田文の文章は「美しい日本語」で書かれている、とされているが、

特に擬音の使い方が上手だと思う。

死の話なのに、文章自体は深刻ではないので読みやすい。