恋人たちの森

森茉莉 新潮文庫

<収録作品>

『ボッチチェリの扉』『恋人たちの森

『枯葉の寝床』『日曜日には僕は行かない』

『ボッチチェリの扉』は

最初は、語り手の下宿先の女家主の息子である

沼二(ひきこもり青年)が主役かと思いきや

妹の麻矢が主役の話。

やはりどこか儚げ。進駐軍が~という時代設定で

太宰治の『斜陽』を連想させる話である。

恋人たちの森』は『枯葉の寝床』の

ベースともいえる話なのだけど、

菓子屋の美少年とフランス文学学者のどちらにも

別に女性の恋人がいて、そちらの絡みもあったりして

悲劇が起こるあたり、こちらの話の方が複雑かな。

でも、『恋人たちの森』の方が美しい小説だと思う。