ワイルド・スワン 上・中・下

ユン・チアン/著 土屋京子/訳 講談社文庫

単行本は1993年に出版されてベストセラーになっていました。

これを読むと自分にとって中国のイメージがどうなるかが

興味あったのですが、今まで読む機会もなく

なんだか微妙なこの時期に文庫版で読了。

三代にわたる中国人女性(作者自身、作者の母、祖母)が駆け抜けた

人生と中国の歴史が書かれた自伝的ノンフィクションでした。

そもそもこの話が書かれるきっかけとなっているのが

母の回想話からだったなので、メインが中国革命~文化大革命で、

祖母編(軍閥時代~抗日戦争)はちょっとなのが残念。

文化大革命の、共産党幹部なのにその幹部たちを迫害するあたりが

旧ソ連スターリン時代を連想されますが、

嫉妬や僻み等の私怨の心の闇がぶわーっと国全体に覆われる感じが一番恐ろしい。

あと、毛沢東に対する信仰的ともいえる忠誠が洗脳ぽいところが……。

権力者の狂気の酷さが国民に反映されているがもういやになります。

今も中国はネット制限して思想抑圧してるんだっけ?

ネット社会というのは、思想の共感を集めやすいのもあるけど、

同時的に懐疑的な思想を深めることのできるアイテムだと思うのです。

ただ、都会人が下方された農村にとっては革命があって表層的な変化はあっても

実は時代の影響をたいして受けてないんだよね。

中国の農村も『日本残酷物語』で書かれていた日本の農村の闇を抱えているけど、

それでもたくましく生きているという印象を受けました。

で、私の中国のイメージについては読了前と変わらずです。

天安門事件以降から、黒い部分が垣間見えていたのと、

近代以前の各時代でも似たようなことが

何回か起こっているくらいは知っていたからかなあ。