フラナリー・オコナー全短篇 上

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

フラナリー・オコナー/著 横山貞子/訳 ちくま文庫

<収録作品>

短篇集「善人はなかなかいない」

『善人はなかなかいない』『河』『生きのこるために』

『不意打ちの幸運』『精霊のやどる宮』『人造黒人』

『火の中の輪』『旧敵との出逢い』『田舎の善人』

『強制追放者』

初期作品

ゼラニウム』『床屋』『オオヤマネコ』

『収穫』『七面鳥』『列車』

下巻もあるが、短篇集なので一冊ずつで読了記録とする。

短篇集は未訳分とバラバラで訳・出版されていたのが

これでまとめられた。訳者が違うバージョンを既に読了で

少し違和感ある作品もあるがまあ良し。

絶版になっている長編『激しく攻むる者はこれを奪う』が復刊

もしくは新訳で出れば、オコナーの全小説は全読了になる。

本作収録の『田舎の善人』『強制追放者』は特に傑作。

どの短篇も心を抉るようなシーンがあるが、

それが初期短篇からスタンスがほとんど変わらないのに驚く。

暴力的でグロテスク、といわれる作風だが

根底的にはキリスト教精神(しかもカトリック)がありなので

信者でない自分には理解困難な箇所が何度か読んでいても

いまだにある。他のキリスト教文学とよばれる作家の小説は

オコナー程はいくらかわかりやすいんだけどな。

綺麗は醜い、醜いは綺麗。暴力と愛の同居。