トマス・H・クック/著 芹澤恵/訳 文春文庫
「記憶」三部作の最終作。
いずれも少年時代に起こった事件を大人になってから
回想する話である。本作は30年前のハイスクール時代に起こった
初恋の美少女ケリーに起こった悲劇について医者である主人公が回想する。
事件の真相は何だったのかと、
<愛>と<憎悪>についての
紙一重的なギリギリな感情が描かれる。
ケリーの周囲の人々が事件後30年たっても
心の傷が癒されないのが疑問だったが、
最後の方の内容で納得できた。
---以下ネタバレ
回想話や、周囲の人たちの態度が、
ケリーが事件が起こったときに死んだような印象を受けるのだが、
実は生きていた、しかし植物人間状態だったのだ。
だから、時間の経過で人々は事件について忘れるということが
出来なかったのだということがわかる。
という状態のため、ケリー自ら真相は語れないが
主人公は回想を当時の証言によって事件の真相が出て来る。
ちなみに、ケリーを襲った犯人は実は主人公なのでは?
という疑惑が出そうな語り口であるが、直接の犯人ではない。
でも、悲劇のきっかけを生んだという罪があるので苦しんでいるであった。