伽羅の香

宮尾登美子 中公文庫

半ばから、身内の死が続き、また自らの病のために

必死の築き上げた香道での地位から転げ落ちて、

不幸な生涯になっていく様の残酷さはなんだったのだろう。

後半、いくら大富豪でも、美人でも、香道の技術が高くても、

結局は生まれつきの身分に負けてしまったという感じだった。

家元制度の疑問というのが、読了後に出てくるのであった。

まあ、主人公の性格もあるけどな……。

東京で財産以外は何もかも失った主人公を、

最後に暖かく迎える故郷の人たちの素朴さが救いか。