ポストコロナのSF

日本SF作家クラブ/編 ハヤカワ文庫JA <収録作品>『黄金の書物』小川哲『オネストマスク』伊野隆之『透明な街のゲーム』高山羽根子『オンライン福男』柴田勝家『熱夏にもわたしたちは』若木未生『献身者たち』柞刈湯葉『仮面葬』林譲治『砂場』菅浩江『粘膜…

青ひげの卵

マーガレット・アトウッド/著 小川芳範/訳 ちくま文庫 <収録作品>『ルゥルゥ、もしくは<言語>の家庭生活』『ぶさ猫』『青ひげの卵』『罪食い人』『緋色のトキ』『サンライズ』 1980年代前半にカナダで出版された短編集。『ぶさ猫』のみ男性が主人公。普遍…

罪の段階

リチャード・ノース・パタースン/著 東江一紀/訳 新潮社 法廷ミステリ。二段組で結構話が長い。元恋人の弁護を引き受けることになった主人公。どうやらシリーズもので最初の方の作品らしいが設定が盛られていて続きがあるというのがすごい。

まだ見ぬ敵はそこにいる

ジェフリー・アーチャー/著 戸田裕之/訳 ハーパーBOOKS 別作品で登場していた登場人物が主人公のシリーズ2作目。らしいがいずれも未読。1986年が舞台で、主人公ウイリアムと宿敵っぽい犯罪者グレアムとの対決。警察小説でもあり、法廷ミステリでもある。ジェ…

悪の芽

貫井徳郎/著 KADOKAWA 無差別大量殺人から始まりいじめの過去やプレイバシーのネット晒しなどなにが最終的に「悪の芽」とはなんだろうと考えさせられる。

僕の心のヤバイやつ 第9巻

桜井のりお 秋田書店 彼氏彼女となってお付き合い開始から開幕。なんとも初々しい。市川がちゃんと山田の両親に報告する話が良い。

奈落で踊れ

月村了衛/著 朝日新聞出版 1998年に旧大蔵省で起こったノーパンすき焼き(実際はしゃぶしゃぶ)事件をモチーフとし大スキャンダルの裏で、暗躍する人々のピカレクスもの。主人公の官僚である「大蔵省一の変人」香良洲をはじめただものでない登場人物が続々出…

ザリガニの鳴くところ

ディーリア・オーエンズ/著 友廣純/訳 早川書房 幼い頃に家族に捨てられてもずっと湿地に住む少女の成長物語と湿地近くの櫓から転落死した事件が並行して語られる。はたして少女が犯人なのか、という謎が出てくるがそちらよりも、数奇な運命に翻弄されつつも…

私はフーイー

恒川光太郎/著 メディアファクトリー 副題「沖縄怪談短篇集」のとおり沖縄が舞台のホラー短編集。表紙がすごく怖い。著者らしい抒情的なのに不気味な異世界へ誘われる内容の作品集だった。

二度寝とは、遠くにありて想うもの

津村記久子/著 講談社 エッセイ本題二弾。随分前に出版されていたのに気づかず。肩が抜けたゆるい気分で気楽に読めるのが良い。

すべてのドアを鎖せ

ライリ―・セイガ―/著 鈴木恵/訳 集英社文庫 ニューヨークにある歴史ある高級マンションという舞台がなぜだか『ローズマリーの赤ちゃん』を連想させられる。あらすじにホラーサスペンスと書いてあったが、ホラーは実際にはなかった(雰囲気はあったが)。スピ…

この本を盗む者は

深緑野分/著 KADOKAWA 大人向けというよりもYA向け。あるトラウマで本嫌いになった少女が本盗人が起こることで、無理やり巻き込まれるファンタジーもの。まさかファンタジーとは全く想像していなかったので意表をつかれた。主人公があまり好きになれなくて話…

他人事

平山夢明/著 集英社 著者名で想像どおりのグロテスクホラー短編集。どれも不条理な暴力が出てきて怖い。普通っぽい人もいるのだが実はそうでなかったりして普通ってなんだろうとなる。

女王

連城三紀彦/著 講談社 なぜか戦後生まれなのに東京大空襲の記憶をもつ主人公が邪馬台国の謎を解くはめになる。邪馬台国論争に一石を投じる物語のようだが主人公が祖父の狂気に付き合わされて人生の一部が狂わさせてるようで気の毒。

月村了衛/著 光文社 野外活動部に所属する中学生と引率する先生たちが合宿先にて殺人も厭わない半グレ集団と戦うことになる。副顧問の先生が身分を偽って潜伏していたテロリストと判明するあたりから形成が一気に変わる。上記設定がB級エンタメぽいが、ダラ…

風配図 WIND ROSE

皆川博子/著 河出書房新社 皆川先生、93歳の著作物。内容がみずみずしいのがもう単純にすごい。12世紀のバルト海になるゴッドランド島に住むヘルガ、アグネといった少女たちが周囲の古い因習や差別などを物ともせず読み書きを覚えたりし商人や通訳を目指す。…

川の光

松浦寿輝/著 中央公論新社 住んでいた川が埋め立てられることになったため新天地を求め冒険の旅へと出るクマネズミ親子の物語。ネズミの冒険ものというとガンバを連想してしまう。街の一部の移動とはいえ、人や犬だと大したことない距離でもネズミだとすごい…

歪んだ窓

山川方夫/著 出版芸術社 ショート・ショートの名手による短編集。純文学系から作家生活スタートしていているためか日常系の話が多め。今読むと時代感強くて古い話も多め。巻末で星新一・都筑道夫と座談会しているが当時30歳くらい?

クララとお日さま

カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳 早川書房 AI頭脳を持つ人工フレンドのクララの視点での病弱な少女ジョジーとの出会いと別れの物語。ジョジーは向上処置の副作用で病弱みたいだが、処置を受けない子どもは大学進学が困難などなにかと格差がある世界となって…

チェスナットマン

セーアン・スヴァイストロプ/著 高橋恭美子/訳 ハーパーBOOKS デンマーク・ミステリ。ノワールものらしいがサイコものでもある。分厚いけどテンポ良く話が進んでいく。犯人の正体が本人からバラされるまで全く予想できなかったくらい意外。

母になる、石の礫で

倉田タカシ/著 早川書房 3Dプリンタでなんでも生み出せる数百年後の未来。地球外で生活する3Dプリンタで生まれた少年少女の物語。作中の「母」という概念が少し読んでいてこんがらがる。背景世界なども複雑だが、少年少女たちの一種の青春物語というか成長も…

トランク 林芙美子大陸小説集

林芙美子/著 中公文庫 <収録作品>『泉』『運命』『黄鶴』『雨』『幕切れ』『トランク』『漣波』 旅好きな著者らしいテーマの短編集。様々な立場の人物たちが登場するが、本来一生海外へ行く機会がなさそうな少女が奥様付きの小間使いとしてパリで生活する…

帝国の亡霊、そして殺人

ヴァシーム・カーン/著 田村義進/訳 早川書房 地道に増えてきているインドミステリ。インド初の女性刑事が独立直前の1949年12月31日に起こったイギリス人殺人事件を追う。主人公のペルシスが周囲の男性社会の差別や軋轢を受けながらという境遇にあって大変な…

おばちゃんたちのいるところ

松田青子/著 中央公論新社 短編集だが、全体を読むと世界が繋がっている構成。幽霊と人間が絡むが少しも怖くない。1作目は少しジェンダー関係の重苦しさがあるが他はそうでもなく全体に軽妙な感じ。

われはドラキュラ――ジョニー・アルカード 上・下

キム・ニューマン/著 鍛治靖子/訳 書苑新社 シリーズ4作目は連作中短編集。時系列は主に1970年代から1990年代前半まで。1作目でのドラキュラのタイトルにあるセリフが本作の最後の方でも宣言される。絶望的? なのかそうでないのか。20世紀の映画とハリウッ…

ユーチューバー

村上龍/著 幻冬舎 コロナ禍にてほぼ客がいないホテルという一種異様な空間の描写は面白い。有名小説家が女性遍歴を語るが著者自身のぽいので自伝風な内容になっている。でもなんだか全体的に物足りない感じ。

持続可能な魂の利用

松田青子/著 中央公論新社 ディストピア? フェミニズム小説。悪意ある「おじさん」たちを打倒しようとする女性たち。結局日本だけではなく、世界中も変革したのだろうか。読んでいてつらいけど、変革したラストで爽快になるかというとそうでもなくて複雑な…

任務の終わり 上・下

スティーヴン・キング/著 白石朗/訳 文藝春秋 三部作完結編。3作目でミステリというよりもキングらしいホラーサスペンスものに。2作目のラストの嫌な予感が当たってしまった。ゲーム機を使って人を操って自殺させようとするメルセデスキラーことブレイディ。…

《ドラキュラ紀元一九五九》ドラキュラのチャチャチャ

キム・ニューマン/著 鍛治靖子/訳 書苑新社 シリーズ3作目。こちらは初読。舞台はイタリアのローマ。ドラキュラがモルダヴィア公女アーサ・ヴァイダと挙式するということで、ヴァンパイアの長生者たちが集結するが彼らを処刑していく深紅の処刑人が出現。そ…

《ドラキュラ紀元一九一八》 鮮血の撃墜王

キム・ニューマン/著 鍛治靖子/訳 書苑新社 シリーズ2作目。実は、表題作を前作の再読前に再読してしまっていた。吸血鬼が当たり前に存在する世界にての第一次世界大戦の戦記もの。ドイツのエースパイロットのレッド・バロンが吸血鬼になっていてイギリス軍…